高市早苗首相が掲げるFOIP強化戦略の要となる日米豪印のクアッドが、トランプ米政権の対中政策の変化と米印関係の悪化により揺らいでいる。茂木外相が首脳会議の開催停滞に懸念を示し、ヘグセス国防長官はシャングリラ対話で「拒否による抑止」を強調するも対中非難を控えるなど、米国の戦略転換が同盟協力に影響を与えている。
高市早苗首相の外交は、安倍晋三元首相が提唱した自由で開かれたインド太平洋( FOIP )を基盤とし、それを強化・発展させることを基本方針としている。 しかし現在、 FOIP の中核である日米豪印の四か国協力枠組み、いわゆる クアッド (Quad)の足並みが揺らいでいる。
背景には、トランプ米政権の通商政策、特にインドに対する高関税措置などにより米印関係が冷却化していることが挙げられる。 茂木敏充外相は、5月26日にインドで開催されたクアッド外相会合に出席し、日本にとって極めて重要なクアッド首脳会議が、第2次トランプ政権発足以降、一度も開催されていないことに強い懸念を表明した。
インドの戦略家ブラーマ・チェラニー氏は、この状況の一因として、トランプ大統領の対中戦略の変化を指摘する。5月中旬に行われた米中首脳会談では、両国が戦略的安定の追求で合意に至り、米国の対中政策は従来の対決姿勢から、より融和的な方向へとシフトした。 さらに、ヘグセス米国防長官は5月30日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)において、セオドア・ルーズベルト元大統領の言葉を引用し、「優しい声で、大きな棍棒を手に」という表現を用いながらも、あからさまな中国批判は避けつつ、米国は太平洋国家であり、潜在的敵対者に対してはハードパワーと集団的即応態勢、揺るぎない決意によって力を見せつける必要があると述べた。
特に、米国の太平洋戦略は、第一列島線上に「拒否による抑止」を確立することにあると改めて表明し、同盟国やパートナー国との連携を通じて地域の安全保障を維持する構えを示した。 これらの発言から、米国は対中政策のトーンを調整しつつも、軍事・戦略的プレゼンスは堅持する方針が読み取れる。 このような米国の戦略転換は、クアッドの結束に影を落とす可能性がある。 インドは、米国の関税政策に不満を抱く一方で、中国との国境問題を抱えており、対中政策で米国と完全に歩調を合わせるのは難しい状況にある。
日本と豪州は、より強固な対中姿勢を求めるが、米国の融和的アプローチがクアッド全体の意思決定を停滞させる懸念も強い。 FOIPの深化を目指す日本外交にとって、クアッドの再活性化は最重要課題の一つとなっている
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